アイレーシックに用いられるエキシマレーザー装置「ビジックススターS4 IR」は、ビジックス社が「ビジックススターS3」を改良したものです。
セブンスキャニングレンズと呼ばれる小さなレンズを回転させることで、レーザービームのエネルギーを均一化し、ウェーブフロント照射を可能にしました。
ビジックス社はAMO社に買収され、さらにアボット社によって買収されましたので、現在はアボット社が提供元になります。
資本力のあるアボット社は2007年に、イントラレーザーのメーカーであるイントラレース社も買収しました。
これにより、イントラレースFS60で作成したフラップとビジックススターS4 IRによるウェーブフロント照射を組み合わせる「アイレーシック」が登場したのです。
アイレーシックのウェーブスキャンシステムでは、高精度のセンサーを使い、波面の歪みを正確に測定したデータを解析・再現し、高次収差の補正を可能にします。
イントラレースFS60は、より正確かつ均一な厚さのフラップを形製することができます。
また、ビジックススターS4 IRは、患者個別の角膜の状況に応じた手術を正確に行うカスタムビュー技術に加え、3Dアクティブアイトラッキング機能、Variable Spot Scanning (VSS)、Variable Repetition Rate
(VRR) などのテクノロジーによりレーザーの機能を高めました。
ビジックススターS4 IRの特長でもあるウェーブフロント照射は、角膜を深く削るため、 強度の近視や乱視は矯正できない場合があります。
カスタムビューが使えない場合、カスタムビューから「コンベンショナル・モード」に変えて照射を実行する医療機関もあると考えられますが、コンベンショナル・モードの照射域は小さいため、夜間視力の低下が懸念されます。
メーカーでは、さらに良好な手術結果が得られるよう、機能の拡張やさまざまな開発を続けています。
アイレーシックの最大の特徴は「一人ひとりの眼に合わせて、すべてをカスタムメイドで治療する」ということです。
角膜は一人ひとりその形状や厚みが異なりますので、その人のオリジナルの照射プログラムを作成することで、これまでの方法では困難だった微細な歪みまで矯正することが可能です。
そのため、視力だけでなく、見え方の質も改善し、よりはっきりとした見え方になります。
(アイレーシックの長所)
●一人ひとりに合わせた矯正が可能。
●0.01D単位の精密な検査精度で高次収差を取り除くことにより見え方の質がより向上する。
●従来のレーシックが無理だった人も受けられる可能性がある。
●安全性、安定性に優れている。
●治療後のシワやズレがほとんどなく、合併症の発生率も低い。
●夜間視力の低下や光のにじみが少ない。
(アイレーシックの短所)
●機器設備が高額なため、一部の施設しか導入していない。
●個人合わせた調整のため、従来のレーシックよりも時間・費用がかかる。
●個人に合わせた調整のため、イントラレーシックよりは角膜の厚さが多めに必要。
●フラップの接着時間が従来のレーシックよりも長く、追加矯正など追加処置を行なう際に期間が必要。
近視を矯正するためにはレーザーで角膜実質と呼ばれる部分を削る必要がありますが、角膜実質の表面には角膜上皮、ボーマン膜という組織があり、実質を削るためにはこれらの組織を取り除かなければなりません。
従来のPRK手術ではこれらを除去してしまうので、回復に時間がかかりましたが、レーシックではレーザーを用いて角膜表面を薄く切って蓋状のフラップをつくります。
これにより、角膜上皮とボーマン膜をほとんど傷つけることなく、角膜実質を削ることが可能になったのです。
実質にレーザーを照射したあとは、フラップを元の位置に戻すだけで、縫い合わせる必要もなくしっかり密着します。
これは角膜の内側にある角膜内皮細胞がつねに角膜を透明に維持するために水分を引いている作用でフラップが内側に引っ張られるからです。
一度密着したフラップは、通常のまばたきや多少の外力が加わってもずれることはありません。
このようにフラップをつくるために角膜表面を削るので、レーシックにはある程度の角膜の厚さが必要になり、角膜が薄い人は受けられないこともあります。
しかし、手動で行なうマイクロケラトームに対して、最新のFSレーザーを用いてフラップをつくる場合、より精密なコンピュータ制御により、正確に均一な厚さのフラップをつくることが可能になり、従来の方法では困難だった人も手術を受けられる可能性がでてきました。
ただし、精密で薄いフラップをつくることができるイントラレーシックより、アイレーシックのほうが、より個人に合わせた見え方を調整するために角膜の厚さが多めに必要なようです。
眼の手術の解説によく出てくる「収差」と「ジオプター」という言葉。
どのような意味かご存知でしょうか?
私たちの目が見ている像は、物体にあたった光が反射して色となったものです。
目はその光の屈折の焦点を網膜に写し、その信号が視神経を通じて脳に伝わり、像として認識しています。
光は波のように進んで目に届きますが、本来は目のなかで光の波が揃ったままが望ましいところです。
が、実際には角膜や水晶体の厚さや凸凹などによってこの波が少し乱されます。
これによって焦点がずれる現象を「収差」といいます。
収差が大きいと、度数は合っていても、ぼやけたり目がかすんだりするため、見え方の質が低下します。
眼鏡やコンタクトレンズで矯正できる程度の収差を「低次収差」、眼鏡やコンタクトレンズで矯正できないほど微細な収差を「高次収差」といいます。
アイレーシックでは、ウェーブスキャン(波面収差解析装置)によって予め微細な収差を測定することでこの高次収差を矯正し、より質の高い見え方に向上させることが可能になりました。
「ジオプター」とは屈折異常(近視・遠視・乱視)の程度を表す単位です。
Dという記号で表されます。
これは焦点が合う最も遠い距離から割り出します。
たとえば100.0センチメートルの場合は−1D、33.3センチメートルの場合は−3D、10.0センチメートルの場合は−10Dで、見るものとの距離が近づけば近づくほど(つまり近くないと見えない)数値が大きくなります。
近視のレベルは−3D未満が軽度、−3〜−6D未満が中等度、−6〜−10D未満が高度、−10D以上が最高度と分類されます。
近視レーシックの矯正量の限度は6Dまで(ただし、何らかの医学的根拠がある場合は十分なインフォームドコンセントのもと10Dまで)、遠視レーシックの矯正量の限度は6Dまでとガイドラインが定められています。
エキシマレーザーは、1980年代の後半頃から研究が重ねられていました。
世界で初めてのレーシック手術が行なわれたのは1990年、ギリシャでのことですが、1995年にアメリカFDA(米国食品医薬局。日本の厚生労働省にあたる機関)により認可され、以後アメリカで普及しました。
歴史は浅いものの、世界一厳しいといわれる安全基準を満たした、安全な機器といえます。
人口や国土の規模の違いがあるために一概に比較はできませんが、アメリカでは2000
年以降、毎年100万件以上が行なわれる一般化した手術になっています。
ヨーロッパでも増加しており、アジアでも中国で今後急増すると見られています。
世界ではすでに数千万人がエキシマレーザーによる屈折矯正手術を受けているといわれています。
新しいウェーブフロント技術も先進国アメリカを中心に進歩しており、今後ますます
普及することが予想されます。
なかでも2006年に米国国防省が空軍パイロットにアイレーシックを許可、2007年には米国航空宇宙局(NASA)が、宇宙飛行士向けにアイレーシックを許可しました。
軍隊や重力がかかる宇宙での過酷な状況でもアイレーシックのフラップが耐えることができるということの表れでしょう。
眼科の国際学会であるASCRS(米国白内障屈折矯正手術学会)においても、中心テー
マは白内障から近視、遠視、乱視、老眼などの屈折矯正手術に移って、さまざまな議論がなされるようになってきています。
眼鏡やコンタクトレンズを使わずに、手術で近視や乱視を矯正する方法としては、当
初はメスを使って行なわれていました。
しかし、エキシマレーザー装置を使って主に近視の矯正を行なうレーザー屈折矯正手術が開発されてから急速に普及しました。
日本では1998年にエキシマレーザー装置が医療器具として認可され、エキシマレーザ
ー屈折矯正手術のなかでも、まず2000年1月にPRK( photorefractive keratectomy)が
厚生労働省に承認されました。
PRKは、角膜表面からレーザーを照射して、角膜の上皮を取り除くので、手術後、角膜上皮が再生されるまで多少痛みがあり、目標とする視力になるまでに数週間から数か月かかります。
この問題を解決するために考案されたのがレーシックです。
日本では2006年10月に近視矯正レーシックが承認され、2008年12月に遠視矯正レーシックが承認されました。
レーシックではマイクロケラトームという器具やFSレーザーを用いて角膜表面近くを薄く切って蓋状のフラップをつくります。
痛みが少なく、視力の回復も早いため、現在では屈折矯正手術の9割以上がレーシックによって行なわれています。
ただし、格闘技など激しい活動をする人はフラップがずれてしまう可能性があるレーシックよりもPRKの方法が適しています。
さらに、2010年6月にはイントラレーシックが認可され、アイレーシックなど個々の目に合わせてカスタムメイド照射をする新しい術式も登場しました。
年々これらの手術を受ける人が増加しています。
現在、アイレーシックを含めたエキシマレーザー屈折矯正手術件数は推定で110万眼を超えていると見られています。
アイレーシックとは、レーザー機器を使った近視・乱視などの屈折矯正手術の一つで、
AMO社製のレーシック関連機器であるウェーブスキャン(波面収差解析装置)、
イントラレースFS60(FSレーザー)、ビジックススターS4 IR(エキシマレーザー)を
使用して行なう場合を「アイレーシック」と呼んでいます。
屈折矯正手術に使われるエキシマレーザーは、フッ素・アルゴン・クリプトンなどの混合ガスを用いて、
目に見えないごく短い波長のレーザー光を出力します。
角膜にこのレーザー光を照射することによって人為的に角膜の屈折を変えて近視や乱視を矯正します。
エキシマレーザーは、半導体製造など精巧な技術が必要な分野でも使用されるレーザーで、
コンピュータ制御により、角膜を精密に削って治療することができます。
熱を出さないため周辺の細胞を傷つける心配がありません。
このエキシマレーザー屈折矯正手術は、大きくPRKとレーシックに分けられます。
レーシックのなかでも、マイクロケラトームという機器を使用するケラトームレーシックに加えて、
最近では機器の高性能化により、イントラレーシック、アイレーシック(iレーシック)、Zレーシックなど新しい術式が登場しています。
これらはFSレーザーを用いてより正確かつ安全にフラップを形成し、
個々の目にカスタムメイド照射するという点で手術内容はほぼ共通していますが、
レーシック関連機器を提供する各企業によってその呼び方を違えているのです。
たとえばパソコンでも"バイオ"や"レッツノート"などさまざまな商標があるように、同じような術式でも名称が違うので、手術を受ける側にとってはわかりにくいかもしれません。
日本眼科学会はこれらをウェーブフロントレーシック(wavefront-guided LASIK)と総称しています。